面倒くさがりの恋愛
3
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 あんな事があってから、数日が経った。

 変わりない日常は、とても平凡で安定していて、そして退屈。

「信藤さぁん。あの二人をどうにかしてください。新人たちが恐れふためいています」

 さっきから声高らかに、嫌味の応酬をしている主任と高嶺さん。

 これだって、日常だわ。

「どうして私がどうにかするの?」

「だって、経理じゃ高嶺さんを恐れないの信藤さんくらいでしょ!」

 それはどういう分類されてるの私。

「や。私だってたまには怖いですよ。だいたい、高嶺さんはかなり先輩なんですから」

 でも、業務に支障がでなければ、皆もここまで怖がらない。

 どうも今日はいつもよりヒートアップしているみたい。

 月次報告書のファイルを閉じて、立ち上がると主任たちの方に歩いていく。

「主任たち。少し声を押さえて頂けませんか?」

「うるさい。信藤! この女は言ったところで言うこと聞かないから放っておけ」

 いや。貴方にも言っているんですけれど、私。

「何があったのか、聞いていないので解りませんが、そろそろ課長も会議から戻りますし」

「いいえ。この際だから、この男の化けの皮を剥がしてやるわよ!」

 なんの化けの皮ですか。

 何だかなあ……なんだかもう。

「くっだらない」

 ポツリと呟いた言葉が、しんとしたフロアに響いた。

 驚いたように私を見る主任と高嶺さん。

「えーと……信藤……さん? 今、何か言ったかしら?」

 困ったような高嶺さんを見て、淡々と頷く。

「くだらないと申し上げました。一瞬で解ります。二人とも、業務以外の喧嘩なら、外で、社外に出てから思う存分、おおらかにどうぞ?」

「え。あの……信藤?」

 今度は慌てたような主任を見て、それから淡々と首を振る。

「そもそも、皆をまとめるのも主任の責務です。その主任が、この場の空気も読まずに、社員と口喧嘩とは嘆かわしい限りです」

「いや。お前さん、どうした? 怖いくらい冷静だな?」

「いいですか、主任」

「うん?」

「ただいま月次報告書の作成中です。つまり通常より忙しいんです。明日は総務から上がってきた勤務表を元に給料計算もあり、人事と連携もしなくてはなりません。どういうことか、お・わ・か・り・ですね?」

 にじりよると、主任は両手を上げて頷いた。

「信藤が、仕事に真面目なのはよくわかった。すまん」

「ありがとうございます」

 ニコリと微笑むと、そのままデスクに戻った。

 なんて言う事はない。日常茶飯事はどうとでもなる。
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