面倒くさがりの恋愛
「後はたぶん癖なんだろうけど、割り箸を割る時に成功するととても嬉しそうにするし、食べ終わりは必ずハンカチで口を拭くよね」

「え。あ……」

「あー……なんて言うか、いろいろ聞きたいんだけど、先に言いたいから言っておくかな」

 真顔になられて身構える。

「は、はい……」

「しかめ面が可愛いと思うのは、もう重症だと思うから、絶対に束縛はするんじゃないかなぁと思う」

「はい?」

 真顔で何を言っているんだ、この人は。

「嫉妬もするし、我が儘も言うだろうし、とてつもなく情けない事を言っている気がするけど、これが俺だし」

「はぁ……」

「仕事中はたぶん真顔だし、笑うことも少ないから、身構えるかもしれないけど」

「笑った方が、いいと思います」

「いや。そんな器用じゃないし」

 軽く笑ってくれて、困った。

 もしかして、これは生嶋さん流の告白……なんだろうか。

 告白……しなおされている?

「社内の人が恋愛対象外だとは思ってもみなかったけど、何故?」

 唐突に質問されて、やっぱり目がまわりそう。

 目まぐるしいぞ、生嶋さん。

「だって、別れたりしたら面倒だし」

「始まってもいないのに、別れ話は考えない」

「前に、嫌なことがあった……」

「最近? 昔?」

「昔……」

 なんだろう。こんな話をしなくてもいいじゃない。

 生嶋さんが知らなくてもいいじゃない。

「言いたくない」

「そう? じゃあ、嫌な時は嫌だと言って」

「こんなことしているのは、不毛だと思う」

「解った。じゃあ、遠慮なく」

 そう言われると、いきなり肩に担ぎ上げられた。
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