面倒くさがりの恋愛
 だいたい人事の生嶋さんと言ったらいつも真顔の印象しかないし、だいたい話をしたとしても、書類の書き方とかで一言で終わるし。

 こんな人だったんだな。

 そう思いつつ……そうか、一言会話していないから、私も印象に薄いんだと気づいた。

 まぁ、それならそれでいいけど。

「生嶋さんモテそうですもんね」

「え? 俺が? まさかでしょう。どちらかと言うと嫌われてますよ」

「そうです?」

「そうですね。職場の女性社員にはいつも緊張されているし」

 それは生嶋さんが真顔だからでしょう。

 私もあんな真顔で話しかけられたら、真顔で返しちゃうわよ。

「笑ったらいいじゃないですか。笑ったら、何だか可愛い感じになりますよね。生嶋さんって」

「え。女性に可愛がられる男はどうですかね」

「あの。いくらなんでも、貴方みたいな大男を可愛いがる女性はいないと思いますけど」

「いや……冗談のつもりなんですが」

 冗談を真顔で言うな!

「ナツミちゃんは面白い子だね」

「ちゃん付けとか、子供じゃないんですけど」

「いやー……俺も大人とは言えないけど、かなり若そうだし」

「おじさんと呼ぶほど歳は離れていないでしょう」

 えーと。確か33歳? 34歳?

 だとしたら、10歳くらいの年の差?

「……じゃ、口説いても問題ない?」

 ニコリと微笑んだ生嶋さんを、まじまじと見た。

「はい?」

「対象外じゃなけりゃ、遠慮なく口説くけど。いいかな?」
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