面倒くさがりの恋愛
「連絡先を教えてもらえる?」

「え。嫌です」

「教えてもらわないと困る。また会いたいし」

「会わなくてもいいと思いますが」

「俺は会いたい」

「いやー……」

「じゃあ、君の友達から聞くかな」

「聞かなくて良いですから!」

 しぶしぶ教えると、生嶋さんはスマホを嬉しそうに操作している。

 まぁ。酔っぱらいの世迷い言。軽く受け流して、お返しに生嶋さんの連絡先も聞いた。

 ……登録したら、出なければ良いんだしね。

 これ以上、面倒な事になる前に、紗理奈に話しかけて楠くんも会話の輪に組み込んだ。

 しばらくして、楠くんが酔いつぶれて、送っていくことになった生嶋さんは困った顔をして、紗理奈は残念そうな顔をした。

 私としてはラッキー。

 何故か生嶋さんのおごりで店を出て、それから紗理奈と並んで駅に向かいながら考える。

「紗理奈。楠くんの連絡先とか交換した?」

「もちろんよ。七海は?」

「お願いがあるんだけど」

 キョトンとする紗理奈に、手を合わせた。

「楠くんに私の事をもし聞かれたら、秘密にしておいてもらえる?」

「は? 楠さんに、あんたのこと聞かれるの?」

「……かも、しれないから。念のため」

「え? どういうこと?」

「彼ら、気づいていなかったみたいだけど、同じ会社なんだよね。色々面倒だから」

「あー……」

 紗理奈はすぐに納得して、それから頷いた。

「でも、聞かれたら何て言えばいいのよ」

「私に口止めされてるって答えればいいよ。そう言えば、拒否られてるのくらい解るでしょうし」

「もったいないなー。生嶋さん、イケメンなのに」

 イケメンかもしれないけどね。

 面倒な事は嫌だよね。

 思いながら、家に帰った。









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