ずっと、そばにいたい
落書きだらけの校門をぬけ、昇降口に入った。
そのまま上履きに履き替えずに土足で上がる。
…何で土足か、ね。
まぁ、暗黙のルールってやつよ。
最初教えてもらったときビックリしたよ。
ヤンキーにもルールがあるんだってね。
がらの悪そうな奴ら(三人)の横を通る。
「て、あれ。今日からまた黒髪?」
「うん、まぁ」
サラッと流す。
転校初日からこの昇降口のヤンキー三人は話しかけてきた。
今は慣れたけど、前はナンパ?されたからビックリした。
『ヘイ彼女~』みたいな。
「もったいなあーーい!」
「似合っておったのに!」
「でも黒髪もいいよな!」
…この昇降口のヤンキーたちは簡単にいうと『バカ』だ。
三人とも顔は普通にカッコいいから、結構もったいない。
濃い茶髪、普通の茶髪、薄い茶髪もそれぞれ似合ってる。
前に確か…三つ子とか言ってたな。
名字がお、……お?
違う違った、田中(たなか)だ。
喋る順番は決まって一斗(かずと)、二斗(にと)、三斗(みと)だ。
「じゃ、……あんたたちも急がないと遅刻するよ」
足を止めて、少し後ろを見ながら言った。
でも、話してて少なくとも話してて嫌な気持ちはしない。
「ご心配なく」
「我らはもう」
「常連者だ!」
「あっそ」
やっぱバカ。
でもこの会話も、いつの間にか日常化しつつある。
よくもってるなぁ~。
三人に背を向けて二階に向かった。