ずっと、そばにいたい



『そんなことどうでもいいからさ、早くルナ達と合流しようよ』


そんなこと言ってたっけ、確か…。


背が七人の中でも一番低かった気がする。

それでも私より高いんだけど…。


明るいオレンジのフワフワしてそうな髪、

クリクリした大きな瞳、

可愛くて小さな顔。


―――そして、私に向けられた鋭い視線。


「――あれ?あんたって確か、あの時」

!!まずい!

反射で少年の口を両手で塞いだ。

少年は赤くなって抵抗するけど、離れてあげるわけにはいかなかった。


だってバレたくないし!

人多いし!


それでも懸命に少年は抵抗を続けて…。


「―――あっ!!」

「プハッ」


無理矢理はがされてしまった。


ハァハァと、肩で息をすると少年は私をキッと睨んだ。

「何すんだよ!殺す気か!!」

「あ、う、えっと…」

って、反論しろよ私!



「そんなことしなくてもっ、もうみんな知ってんだよ!」


頭が真っ白になった。


「…は?」


何も考えられない中、引いていたはずの痛みが、頭痛が私を襲った。

あまりにも激しい痛みに、思わず頭に手をやる。


「ここにいる全員っ、あんたの正体知ってんだよ!!」


めまいがした。

グラングランと、視界が激しく揺れて気持ち悪くなった。


「あんたが…おい?…おい!」


私の呼吸が荒くなった。

上手く、聞こえない…ダメだ。

力が抜けた。

フラッと、体が傾いた。


―――誰かに、後ろから支えられた。

優しく包み込むように、たくましい腕は私を抱いた。


「――おい、しっかりしろ。大丈夫か?」


深く優しい男の声が、耳元で囁かれた。

首を横にふった。


キツい、とにかくキツい。


そしたら男は私の顔をのぞきこんだ。

男の顔が見えた。

あの時の男だった。

私の腕を掴んで、はなそうとしなかった、あの男。



…銀髪。



「…銀狼」


朦朧とする意識の中、呟いた。


彼の口が動く。


「そうだ」


私が最後に見たのは、悪戯っ子のような笑顔の彼だった。



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