クローバー♧ハート - 愛する者のために -

声を掛けてくれた女性は、この病院の院長の奥さん。

通りで冷静に、私をここに連れて来てくれた訳だ。


結局その日は安静にしていなくてはいけないと、そのまま入院となり

数日後――悠が元気な産声を上げて、生まれてきてくれた。


入院中、奥さんの“佳純さん”と仲良くなり沢山話をした。

佳純さんは、五十二歳。ちなみに、旦那さんの斎藤修一先生は五十三歳。

二人は幼馴染で、家も隣同士だったんだとか。

斎藤先生が三十六歳の時に、この町に開業することになり二人で引っ越してきたそうだ。


私は佳純さんに未婚の母だと言うこと、妊娠前までは看護師をしていたこと。

今は貯金を崩して生活をしていて、仕事などまだ決まっていないことを話すと

ココで働かないかと言ってくれた。

ちょうど先月、看護師さんが一人辞めてしまって人手不足なのだと言う。

困ったときはお互い様だからと。

優しい笑みを浮かべて、私の手を取ってくれた。


その時は、本当に人の温かさ有難味を思い知った。

佳純さんだけじゃない、この町の人達はみんな温かい。

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