クローバー♧ハート - 愛する者のために -
「……んだよ、それ」
泣いているのか、怒っているのか。
俯き、悠の表情は見えない。
けれど小刻みに震える肩は、苛立っているようにも見える。
「黙っていて、ごめんね。でも――」
この先、ずっと二人でいるなら裕貴の事なんか話す必要が無いと思っていた。
それに私には、勇気が無かった。
「なんだよ、それ。僕をずっと騙していたの?」
「悠?」
「ハルなんて、嫌いだ……僕、今日はイチにぃんところに泊まる。良いでしょ、イチにぃ」
隣に座っていた護くんの腕を引っ張り、上目遣いで懇願する。
悠が初めて私に“嫌い”って言った。一気に体温が下がった。
息子が私から離れていく――。
覚悟はしていたつもりだけど、実際にそうなると不安が押し寄せた。
このまま、私の元には帰ってこないんじゃないかって。