クローバー♧ハート - 愛する者のために -

聞きたくない。

彼の声も、言葉も、何もかも――。

そう思った瞬間、スマホを耳から離し通話終了を押した。


今更、何を言いに来たんだろう。

それに、番号も何処にいるのかも誰にも教えていない。

あの頃親しくしていた人たちにさえ、何も言わずにこの町に来たのに――。

よりによって、なんであの人が連絡をしてきたの?

分からない、どうして……。



「はるちゃん……あら?どうしたの。顔色が悪いわ」

「佳純さん。なんでも、ないです」



今できる精一杯の笑顔を浮かべる。

この人たちに、迷惑をかける訳にはいかない。



「そう?でも、無理はしないでね。何かあったら言って」

「ありがとうございます」

< 14 / 303 >

この作品をシェア

pagetop