クローバー♧ハート - 愛する者のために -
突然吹いた風に、悠の小さな声が掻き消され
私は乱れた髪を抑えながら、もう一度聞きなおした。
「だから、僕にも分からないんだよ!」
立ち止まり、小さな拳を握りしめて苛立ち叫ぶ。
俯きその拳は小刻みに震えていて、何かに耐えているようにも見えた。
「ッ――ごめん、ごめんね悠……」
思わず駆け寄り、小さなその体を後ろから抱きしめる。
あぁ、混乱させるほど悠を追い詰めたのは私だ。
悠は周りの子より大人びていても、五歳の子供。
六歳になったばかりの息子に「どうしたいのか」なんて
性急に決断を委ねるのは、筋違いだったのかもしれない。
でも……それでも、彼の気持ちを最優先に考えたい。
「悠、お願いがあるの。私と一緒に、弁護士さんに会ってくれない?」
悠を抱きしめたまま、ある決意と共に聞いた。
例え私を選ばなくても、後悔だけはして欲しくない。