クローバー♧ハート - 愛する者のために -
「気を付けて帰って下さいね」
いつもと変わらず、三日月のように目を細めて笑顔を向けてくれる。
ほんの少し、その笑顔に淋しげな表情が混じっていた。
「はい」
「また明日」
手を振って園を出た。
右手にはしっかりと、悠の手を握って。
悠と一緒に買い物に行って、晩御飯を食べて、いつもの生活リズムに戻ると
やっと少し落ち着けた。
大丈夫、もう大丈夫――。
電話番号も拒否したし、もう掛かってくることは無い。
それに、会うことも無いはずだ。
そう思っていた。
だけど、そんな考えは甘かった。
誰にも教えていない連絡先。それをどうやって彼が知ったのか。
それを考えれば、次に彼が起こす行動なんて気が付いたはずなのに
私は分かっていなかった――。