クローバー♧ハート - 愛する者のために -
「どうして?そんなの決まってるじゃない。あなたが私の大切なものを奪ったから、私もあなたの大切なものを奪おうとしただけよ」
由依さんは苛立ちを滲ませた顔で、私を睨み付けてきた。
私が彼女の大切なものを奪った?
今まで、裕貴たちに関わらないように生きてきた私には見当も付かない。
「どういうこと?あなたが何を言っているのか、分からないわ」
「しらばっくれないでよ!この泥棒猫!!」
彼女の叫びと共に、頬に痛みが走る。
不意を突かれたせいで、後ろにニ、三歩ふらついた。
キーンと耳鳴りがする中、暫くして頬を叩かれたのだと気が付く。
「ハル、大丈夫?」
心配そうな顔を浮かべて、私の足にしがみ付く悠。
けれど、今の私には彼に声を掛ける余裕がなかった。
もちろん大声で叫ぶ私たちに、周りの人達が何事かとだんだん騒ぎはじめ
注目し集まり出したことにも気が付かないでいた。
「私からしたら、あなたの方が泥棒猫じゃない?!私の方が先に裕貴と付き合ってたのに……悠がお腹の中に居るって知って、これからって時にあなたが裕貴を奪ったんじゃない!!」