クローバー♧ハート - 愛する者のために -
パーン!とまた乾いた音が響き渡り、私の右手に痛みが走った。
こんなこと、言うつもりじゃなかった。
だけど心の奥に抑え込んできた口惜しさが、由依さんの言葉に触発されて溢れ出てくる。
もう私じゃ抑えきれない。
「そんなの知らないわよっ!!裕貴も年増のあなたより、私の方が良かったんじゃないの」
そう言い終わらないうちに、私の右頬に痛みが走り視界が揺れる。
両方の頬が赤く腫れジンジン痛むけれど、ここで引くわけにはいかない。
何故だか分からないけど、彼女には何があっても負けたくないという気持ちが勝っていた。
由依さんをキッと睨み付け、右手を引き勢いをつける。
そして振り下ろした瞬間、私と由依さんの間に男性が割り込んだ。
ダメ、止まらない!!
勢いが付いた右手は、そのまま彼に――。
あぁ、関係のない人を巻き込んでしまう!
目をギュッと閉じ、手に感じるはずの衝撃を待った。
けれど感じたのは衝撃ではなく、温かな手のぬくもりだった。
「二人とも、そこまで!」