クローバー♧ハート - 愛する者のために -

「教会?」

「ん、こっちだよ」



護くんが手を引いて門を開け、その中へ入っていく。



「勝手に入っていいの?」

「大丈夫。話はしてあるから」



薄暗い中、どんどん奥へと進んでいく護くん。

街灯は所々あるけれど、陽が沈んだ今は殆ど周りが見えない。

頼りになるのは、繋いだ彼の温かな手だけ。

悠は、まだ眠いのか反対側の手を繋いだまま喋ることなく付いてくる。

そして暫く、歩いた先。墓地が並んだ一角で護くんが止まった。



「ここは?」

「俺の母親だって……」



“お母さん”だと言っておきながら、まるで他人事のようだ。

思わず「本当に?」と聞いてしまう程に――。



「うん。俺ね、孤児なんだ」


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