クローバー♧ハート - 愛する者のために -
突然の告白に、目を見開き驚いた。
「俺、生まれてすぐに母親に捨てられて……施設で育ったんだ」
彼の口から次々と語られる真実に、手が震える。
これは寒さじゃなく、心が体を伝わってきているものだ。
「父親も母親も知らない。今までは、それでも平気だった。だけど、この前はるさんに両親に会わせてって言われて……初めて、両親を探そうと思った」
「ゴメンね、時間が掛かって」と彼は続けた。
その顔はとても切なくて、今にも消えてしまいそうなくらい儚い。
会わせて、なんて言わなければよかった。
自分の口から出てしまったのものは、取り返すことが出来ない。
それは分かってはいるけれど、彼を傷つけただけなんじゃないかって後悔した。
「ごめんなさい。私、知らなくて――」
護くんと繋いでた右手が、冷たい。
でも今、もう一度彼と手を繋ぐことが躊躇われる。
「はるさんが謝ることないよ。誰にも言ってなかったんだから、知らなくて当たり前」
クスリと笑うと、もう一度十字架の墓標に視線を落とした。