クローバー♧ハート - 愛する者のために -
「俺ね、“家族”って言葉には昔から憧れてたんだ。だけど、どうやって家族になれるのか分からなかった。保父になってからも、良く分からなくて……」
家族……両親の顔を知らない護くんは、人を愛する気持ちはあっても
家族とは、どういうものなのか理解できなかったのかもしれない。
神谷さんと一緒に住んでも、彼も忙しい人だ。
家族との時間というのは、あまり取れなかったのかもしれないと感じる。
「だけど、はるさんと悠に出会って……お互いを必要として支え合ってるのを見て、家族ってこういうことなのかもしれないって思えたんだ」
くしゅん……
小さなクシャミが、下から聞こえた。
「悠、寒いの?」
「ん……ちょっとだけ」
悠は、ぶるっと身震いをすると、首を竦ませコートをたくし寄せた。
屈んで彼の小さな手を握れば、凄く冷たくなっていて
思わず悠を抱きしめ背中を摩る。
少しでも温かくなるように――。