クローバー♧ハート - 愛する者のために -
いつも背伸びして、感情を押し殺したようなものじゃなく
五歳児らしい笑顔を――。
そういう時間を、少しでも大切にしてほしい。
……そう思うのは、私のエゴだろうか。
子供らしく出来ないのは、きっと……ううん、絶対私のせいだ。
もっと私がしっかりしていれば、悠は子供らしく出来るのかもしれない。
「よーし、いい子。ご褒美にチューしちゃう」
「わっ、止めろ」
顔を近づけただけで、しかめっ面を浮かべる悠。
そして、これ以上近付かないように両手で私の頬を突っ張った。
「うわぁ、傷付くなぁ。悠は、お母さんが嫌いなのね。泣いちゃう」
大袈裟に言って、両手で顔を覆い泣き真似をする。
悠の手のお蔭で、一ノ瀬センセの前で変顔を披露する羽目になったのだから
これくらい許してもらえるだろう。