クローバー♧ハート - 愛する者のために -
第一葉
幸せを切り裂く着信音
「悠、しっかり捕まってて」
自転車の後ろに乗せた悠に声をかけて、小さな手が私の背中を掴んだのを確認してからベダルに力を入れた。
五月の爽やかな風が吹き抜ける街道。
私は鼻歌を歌いながら、颯爽と自転車を漕いで行く。
でも、そうそう呑気にしてられないかも。急がないと、本当に遅刻してしまう。
家から幼稚園までは、自転車で10分の距離。
この近さが、また油断させてしまう。
「到着♪」
よし、なんとか間に合った。
周りのママさんに挨拶を交わしながら、悠を自転車から下ろし園内へ。
ここは叶奏(かなで)幼稚園。
二年前、空きがなかなか見つからないと、同僚に愚痴をこぼしていた時
偶然私の仕事場にココの保父さんが来ていて、たまたま空きが出たからと
園長に掛けあってくれたのが縁で通わせてもらっている。