クローバー♧ハート - 愛する者のために -
「悠……一ノ瀬センセ、早く中へ」
少しでも楽になるように、悠の背中を何度も撫でる。
そして病院の中へと促した。
「はい……あ、でも」
彼の目が、さっきまで私が話していた相手を見詰める。
あ、まだ居たんだ。帰ってって言ったのに――。
「いいから、早く」
「はい」
戸惑いつつも、一ノ瀬センセは何も聞かずに中に入ってくれた。
後でお礼、言わなくちゃ。
「悠、どうかしたのか?」
すれ違いざまに、少し慌てた様子の裕貴が声を掛けてくる。
“悠”って気安く呼ばないでほしい。