クローバー♧ハート - 愛する者のために -

斎藤先生はにこやかに微笑んで、席を立つ。

それに付き添うように、佳純さんも診察室を出ていった。

ここは自宅兼病院になっているから、リビングで休んでいるところを来て下さったんだ。

私は、お二人に向かって深くお辞儀をした。



「悠、夕方からおかしかったんです。いつもはよく喋るのに、口数が少ないっていうかあまり話さなくて……。気になって話しかけたら、急に倒れてしまって――はるさんに何度も連絡しようと思ったんですけど、悠が連絡するなって言うものだから、こんな時間になってしまって。俺の判断ミスです。スミマセン」



肩を落として、顔が見れないくらい深く頭を下げ謝る。

普段の明るい笑顔を浮かべている先生と同じとは思えないくらいだ。



「一ノ瀬センセの所為じゃありません。わがままを言ったのは悠ですから」



私にはあまりワガママ言わない癖に、一ノ瀬センセには言うのね。

本当に信頼してるんだ。だけど、少し寂しいな。

ベッドに横になる悠の柔らかな髪の毛を撫でながら、安堵の溜息を吐いた。

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