クローバー♧ハート - 愛する者のために -

あ、やっぱり気が付いてたんだ。

別に嘘をつく意味もないし――でも完全プライベートなことを、幼稚園の先生に話してもいいのかな。



「あ、あの。話したくないことなら、無理にとは言いませんから」



ふふ、そんなに慌てなくてもいいのに。

別に話したくない、とかではない。

ただ私の昔話を聞いたところで、面白いわけでもなく……逆に不愉快になるかもしれない。

それに悠に聞かれたくない。例え今、眠っていたとしても。

悠の柔らかな髪を撫でながら、小さく溜息を吐いた。



「はるちゃん。点滴が終わったら、連れて帰っても大丈夫だからね」

「は、はい」



佳純さんが顔だけだしてそう言うと、すぐに病室の方に消えていった。

きっと気を遣ってくれたんだと思う。



「一ノ瀬センセ。ご迷惑じゃなかったら、自宅まで一緒に来てくれませんか?」

「迷惑だなんて……むしろ、嬉しいです」



嬉しいって言葉はお世辞とかではないらしく、散歩前の子犬のようにシッポを振っているのが目に浮かぶくらい嬉しそうにしている。

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