クローバー♧ハート - 愛する者のために -
ホントは他の園児が待っているだろうし、早く幼稚園に返してあげないといけないのに
もう少しだけ一緒にいたいと思ってしまうのは、きっとあの人に会ってしまったから。
悠を奪われるかもしれない、その恐怖心が
気の許せる人と一緒にいたいと思わせているんだと思う。
点滴が終わるまで、幼稚園での悠の様子を聞いたりしながら時を過ごす。
「あの、重いでしょう?私が背負いますから」
「これくらい軽いですよ」
病院から出る時に、悠を背負おうとすると一ノ瀬センセが
自転車もあるし、俺が背負いますと買って出てくれた。
それでもやっぱり気が引けて、何度か「変わります」と言ったものの
「平気です」とかわされ、結局一ノ瀬センセの好意に甘えることにした。
暗い夜道を、並んで歩く。
悠は、薬が効いているのかスヤスヤと寝息をたてて眠っている。
「一ノ瀬センセ、今日はいろいろご迷惑をお掛けしました」
自転車を押しながら隣を歩く彼に謝る。
なんだか今日は、いろいろある日だなぁ。