クローバー♧ハート - 愛する者のために -
まさかあの人が目の前に現れるとも思わなかったし
しかもその現場を、一ノ瀬センセに見られてしまうなんて。
それに普段、風邪すら滅多にひかない子が熱を出すなんて誰が予想できただろう。
「いえ、そんな事ありません。気にしないで下さい」
ずり落ちた悠の体を背負い直し、私に笑い掛けてくれる。
「……病院に来た時、驚きましたよね」
「え……あ、はい」
「あの人は――」
一ノ瀬センセも気にしているだろう事を、話そうとした瞬間
隣でお腹がクゥ〜と可愛い音が聞えた。
「す、すみません。俺、昼過ぎから何も食べてなくて……」
恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、そっぽを向いた。
悠を背負っているから顔を隠すことが出来ないんだと思うけど
反対側を向いている顔を、見てみたいと思った。