クローバー♧ハート - 愛する者のために -
彼の姿を見るや否や、悠は更に私の腕を引っ張る力を強め走り出す。
それにつられて、転ばないように細心の注意を払いながら足早になる。
「一ノ瀬センセ、おはようごさいます」
「おはようございます、はるさん。今日も、可愛いですね」
三日月のように目を細め柔らかい笑顔を浮かべる、一ノ瀬センセ。
時々、変なお世辞を言ってくるのが玉に瑕。
30歳の私に可愛いとか、一ノ瀬センセの感覚はちょっとズレてると思う。
彼の年齢なら、可愛い子なんて周りに沢山いると思うしね。
「イチにぃ、おはよ」
「おはよう、悠くん」
目線を合わせるように、腰をかがめて挨拶をする。
こうやって園児一人ひとりに、目線を合わせてくれるところ凄く嬉しい。
大切にしてくれてるって思えるから。
「イチにぃ。そんなんじゃ、一生掛かってもハルには気付かれないよ」