クローバー♧ハート - 愛する者のために -
普段通り病院へ出勤し、ロッカールームで着替えていると
一人の同僚が話しかけてきた。
「ねぇ、陽香聞いた?」
「何を?」
「何をって、福山先生のことよ。婚約したって……本当に知らないの?」
え……婚約?まさか私?
裕貴からは何も聞いてない――だけど、ご両親の説得が上手くいったってことかな?
「婚約って、誰と?」
少し期待を込めて聞いてみる。
「本当に知らないんだね。この櫻井総合病院の院長の孫娘。十九歳だって」
この後も同僚の話は続いていたが、私の耳には届いていなかった。
嘘でしょ……どうして。
分かって貰うまで説得するって言ったじゃない、嘘つき!!
私よりも、その人を選んだって事なの?