クローバー♧ハート - 愛する者のために -
やっぱり、その話なんだ。
彼が裕貴の父親だと名乗った時から、嫌な予感はしていた。
なにを言われるんだろう。隠れて付き合っていたことを罵倒されるんだろうか。
それとも、名誉棄損で訴えるとか?
あぁ、もう。いろいろ考え過ぎて、頭がおかしくなりそう。
「単刀直入に言おう。裕貴とのことは、今後一切誰にも言わないことを約束してくれ」
そういうと同時に、テーブルの上に厚みのある茶封筒を差し出した。
え……それだけ?
彼の言葉に、拍子を抜かれた。
もっと凄いことを要求されるのかと思っていたから……。
けれどホッとするのも束の間。
彼の次の言葉で私は息を飲み、目を見開いた。
「ここに500万ある。堕胎手術代も含めて、十分な金額だと思うが――」
堕胎……この人は、私が妊娠しているって事も知っている。
私でさえ、一週間前に知ったばかりだと言うのに
この人はどうやって調べたんだろう。