クローバー♧ハート - 愛する者のために -

誰も居ない個室で、私は息を押し殺して泣いた。

院長室に近いココは、患者さんはもとより医者や看護師も滅多に通らない。

ほとんど院長専用みたいな感じになっている。

どのくらい泣いていたのか……気持ちが少し落ち着いてから個室から出て

洗面所の鏡の前に立った。


酷い顔――。

化粧は剥がれ落ち、瞼は腫れ、目は赤く充血している。

元々ナチュラル派の私は、化粧が剥がれても別人って程ではないけれど

スッピンでいられるほど度胸はない。

このままじゃ、患者さんの前に立つなんて出来ないな。


どうして、こんなことになったんだろう。

何がいけなかったんだろう。

分からない……これから、どうすべきなのか。

フラフラする足取りで、トイレを出て廊下を歩く。


でも、ひとつだけハッキリしていることがある。

この子は、私の手で守って育てる事。

その為には、どうすればいい?

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