クローバー♧ハート - 愛する者のために -
私に聞こえないように子供なりに配慮したのか、一ノ瀬センセに耳打ちするように
少し小さな声で話しかける。
だけどその言葉は、傍にいた私にはしっかりと耳に届いていた。
私が何に気が付かないって?
訳の分からないこと言ってセンセを困らせるなんて、困った子。
「悠くん、何言ってるのかな?……すみません、一ノ瀬センセ」
ワザとらしく“くん”付けして悠の頭をわしゃわしゃと掻き撫でた。
悠は迷惑そうな顔を向けてきたけれど
構わず彼の頭を軽く押さえ付けて、一緒に頭を下げる。
先生相手に上から目線で言うなんて、生意気にも程があるわ。
帰ってきたら、言い聞かせておかなくちゃ。
「謝らないで下さい、はるさん」
眉を下げて苦笑する一ノ瀬センセ。
本当に優しい先生だ。怒ったところを見たことが無い。
これじゃ人気が出るのも頷ける。