クローバー♧ハート - 愛する者のために -
考えを巡らせていくうちに、ある結論にたどり着いた。
社会人して、こんな事してはいけないと思う。
だけど、今の私にはそうするしか方法がない。
その日のうちに婦長に会い、ある物を手渡した。
一瞬、怪訝な顔つきで私を見たけれど、総てを悟っているかのように
婦長は何も言わずソレを受け取ってくれた。
「楽な道のりじゃないわよ。お気張りやす」
最後にかけてくれた、その言葉。
婦長は京都出身らしく、時々方言が出る。
私が新人で入った時に指導係をしてくれたのが婦長だ。
それからいろいろ気にかけてくれて、まるで本当の姉のように慕っていた。
「気張る=頑張る」彼女なりの、メッセージ。
きっと婦長は気付いてたんだろう。私と裕貴が付き合っていた事を。
もしかしたら、妊娠していることも気が付いているのかもしれない。
私は、彼女に深く頭を下げて病院を後にした。
そしてマンションに戻ると、必要最低限の物だけバッグに詰め込み電車に飛び乗った。