クローバー♧ハート - 愛する者のために -
行く先なんて決めてない。
だけど、少しでも早くこの街から……福山親子から離れなければいけないと思った。
この子を守る為に――。
電車に揺られて二時間。
たどり着いたのが、この町。
電車の窓から見えた、畑や田んぼが広がるのどかな景色に惹かれた。
それに、この町には小さな町医者しかなく福山病院とは縁も何もないと思ったから。
ここでなら、親子二人で慎ましくも生きていけるかもしれない。
私はこの町に住むことを決めた。
それから六年――。
この町に来てからも、決して順調とは言えない。
色々なことがあって、死のうと考えたこともある。
だけど、悠を産んで後悔したことは一度もない。
彼は私の全て。私の命そのもの。
彼がいなければ、今の私はいない。
そう言っていいほど、悠の存在は大きい。