クローバー♧ハート - 愛する者のために -
幸せのひと時
一気に話終えると、温くなったお茶を口に含んだ。
コップをテーブルに置くと、目の前で私の話を静かに聞いてくれた
一ノ瀬センセに目を運ぶ。
「俺、なんて言ったらいいか――」
綺麗な茶色の瞳を揺らし、言葉を選んでいるのが分かる。
優しいセンセだけに、私の話に心を痛めてくれてるのかもしれない。
「一ノ瀬センセが気に病むことはないですよ。もう過去のことですし……ただ、私が今まで生きてこれたのは、悠のお陰。悠がいるから、私は私でいられるってことです」
そう。悠がいなければ、今頃はきっとこの世になかっただろう。
この町に来て、半年くらい経った頃を思い出し、目を伏せた。
最初の頃は、どうしたって福山親子が脳裏をちらつき
彼らが私を探しているんじゃないかって、ビクビクする毎日。
出来るだけ人との接触を避け、働くこともせず隠れるように住んでいた。
それにより近所の方々ともあまり話をすることも無く、安いアパートに引きこもっていた。