クローバー♧ハート - 愛する者のために -
けれど貯金も底をつきはじめ、いざ働こうとしても妊婦と言うだけで、なかなか雇ってもらえない。
追い詰められた私は、世界から一人取り残されたような気がして、川に飛び込もうかとか
町を歩きながら、あのマンションの屋上から飛び降りたら死ねるだろうか
とか考えたこともある。
その度に、悠がお腹の中からドンドンと叩いて引き留めた。
「僕がいる。お母さんは一人じゃない」「生きて」と何度も――。
……このことは、今の一ノ瀬センセには言えないな。
今だって、自分の事のように考えているのか泣き出しそうな顔してるもの。
本当に優しい人……あの頃出会った人が、一ノ瀬センセだったら良かったのに――。
彼のような優しさが、少しでも裕貴にあったら私の気持ちを考えて
あんな言葉、絶対に言えない筈なのに――。
「……悠を引き取りたいなんて」
付き合っていた頃は、患者さんの為にっていろいろ手を尽くしていたのに
あの頃の裕貴は、何処に行ってしまったの?
時折り浮かべる笑顔を思い出し、コップを握る両手に力が入った。