クローバー♧ハート - 愛する者のために -


「え……」



一ノ瀬センセの口から小さく驚きの声が漏れ、目を大きく見開いて私を見詰める。

そして数回瞬きを繰り返した後、深い溜息をついて額に右手を当てた。



「裕貴さんは、悠を引き取りたいって言ってきたんですか?はるさんに謝りに来たんじゃなくて?」

「えぇ、そうよ。“俺たち”は悠を息子として迎えたいってあの人は言ったもの」



夫婦仲が冷めていても、離婚はしない。

ただ単に、跡取り息子が欲しいってことなんだろう。

それが例え、元カノが産んだ子供であっても――。


お父さんや奥さんは、この事を知っているんだろうか。

最後にあった日、あの人は私が悠を産むことを酷く嫌っていた。

“許さない”と言い切るほどに――。

それなのに、福山家に迎え入れようというの?


それに奥さんだって自分に子供が出来ないことで、重圧を感じているだろうに

それに付け加えて、よりにもよって元カノが産んだ子供を育てようなんて

苦しんでいるんじゃないだろうか。

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