クローバー♧ハート - 愛する者のために -
自転車にまたがり、仕事場へ――。
私の仕事場は、この町にある個人病院。
自転車でも十五分ほど離れた場所にある。
六年前、まだ悠がお腹の中にいた頃。
私は、ある人から逃げるようにこの町に来た。
あの頃の私は、誰も知らない新しい街で、お腹の子と二人で生きていこうと
心に決めていた。
そんなある日、買い物から帰る途中で突然腹痛が襲った。
臨月を迎えたものの、出産予定日にはまだ早い。
足に感じる生暖かい水。
まさか、破水?
焦りながらも、立っていられなくなりその場に蹲る。
「どうしたの?大丈夫?」
暫くその痛みに耐えていると、通りかかった少し年配の女性が話しかけてくれた。
「お腹が……」