クローバー♧ハート - 愛する者のために -

そうだよねぇ。

今まで死んでるって言ってきたのに、生きていたなんて今更言えないよ。

ましてや、悠を引き取りたいって言ってるなんて――。


♪~♪~

私の大好きな、女性アーティストのバラード曲がスマホから流れ出す。

ぼんやりとしていた私は、相手が誰だか確認することなく耳に当てた。



『陽香。良かった、出てくれて』



心底安堵したような息遣いが聞える。



「っ、裕貴――」



意図しない彼の声に、ビクッと体が震え歩む足を止めた。



『会いたい。会って、ちゃんと話を聞いて欲しいんだ』



話なんて聞きたくない。

どうせ、言うことなんて分かってる。


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