思い出してはいけないこと(仮)加筆修正進行中
それでも時間は流れ、次は午後の部最後の借り物競走だ。
競技のときは、勿論ネコミミカチューシャとしっぽを外す。
ピストルが鳴ると、一斉に走り出し、中央に置かれた長机の上にある箱の中から一枚紙を引く。
「………気になる男子生徒?」
そう、紙には書かれていた。
気になる……気になる。
「蒼空……?」
ぱっと思い浮かぶのは蒼空だった。
さっきも、何か言いたげに声をかけてはなんでもないなんて言って、気にならないわけがないのだ。
さっきだけじゃない。
今までだってそうだ。
何か隠してる。
この気になるということが、果たして正解なのかはわからないけれど、思い浮かぶものはそれしかなかった。
確か蒼空は、テントのところに居るはず。
蒼空の姿を遠目で確認すると、私はお題の紙を握りしめ、真っ先に蒼空の元へと走り出した。
「………蒼空!」
「優那?」
「来て」
「えっ?」
状況のわかっていない蒼空の手を、半ば強引に掴むと、一直線にゴールへ向かった。
再びピストルが鳴り、ゴールを知らせる。
『1位は、2年東軍の凪宮優那さん!!』
アナウンスの人が、マイク越しに喋り出す。
『さてさて、お題は____気になる男子生徒!!!』
『これはつまり、凪宮さんは、あの大人気の綾瀬蒼空さんが好きだということでいいのでしょうか!?』
「……え?」
好き?
気になるって、好きとかそういうこと……?
そう言うつもりじゃなかったのに。
「あの、違くて___」
やはり、私の思う気になると、お題の気になるは、違っていたようで。
私声は誰にも届かない。
「優那……?」
「これは……違う。誤解……」
全校生徒の前で、そんなことを言われてしまうと不覚にも焦る。
誤解をさせてしまうと、後々怖い。
『おやおや?顔が赤くなっているようですが!?真相はいかに!』
それは、走ったから………というのもあるかもしれないが、恥ずかしさもある。
「ち、違う!!」
必死に伝えても、マイクを通っていない声は周囲の人間にしか届かず、誤解は解けない。
蒼空の顔が見れないし、焦って心拍数は上がるばかり。
そんな状況に、急に逃げ出したい衝動に襲われ、私は蒼空を置いてその場から逃げ出した。
苦しくて……痛いくらいに走った。
呼吸じゃない。
胸が苦しいんだ。