思い出してはいけないこと(仮)加筆修正進行中
それから6年経った今、一部の記憶だけ薄ぼんやりとは思い出せるようになった。
しかし、ほとんどのことは思い出せないままだ。
だが何ら問題なく過ごしているのが今の現状。
もう、思い出すことを諦めてしまったから。
過去は消えても未来は消えないじゃない?
それなら、気にしなければいい。
どうにかなる。
高校に入学し1年が過ぎた高校2年、私に突如転機が起こる。
それは”転校”。
大都会の外れにある大きな学園。
そこは寮制で、全員が寮に住むことが原則となっている。
転校の理由としても、別にいじめられてる訳でもなく、父の転勤でもない。
「優那、話があるの。少しいいかしら」
春風が暖かいと感じ始めた4月下旬頃の、ある日のこと。
学校から帰宅した私は、制服から着替える間もなく、母に呼び出された。
「お母さん何?」
「突然なんだけど、田舎に住んでるおじいちゃんの体調が悪化したみたいなの……それでお父さんと二人で田舎に帰ることにしたの」
「うん」
この言いぶり、嫌な予感が。
「でも、あそこって高校に行くにも3時間以上かかるくらい田舎じゃない?
流石にそんなところに連れて行くなんて……貴方も辛い思いをすると思うわ。
だから、貴方を寮制の学校に転入させようと思うの」
「………そっか……え?」
あまりにもなめらかに口を滑らせるもので、内容の理解がまだ出来ていない。
「手続きはもう済ませたわよ。明日にはもう学校に行ってもらうから」
「はぁ……」
「大丈夫、ちゃんと仕送りはするわっ!」
キラキラとした眼差しで話す母は、まるで私に"拒否権はない"と言っているようだった。
手続きを済ませてしまった以上、拒否なんてもの、どう足掻いても出来ないのだけれど。
「そういう問題じゃないんだけどな……」
と、まあ母の唐突な申し出に対し、断ることなんてできず、今日私は新しい制服を身に纏い、キャリーバッグを片手にここ"藤咲学園"へとやってきた。