思い出してはいけないこと(仮)加筆修正進行中
「________私、小さい頃の記憶がないの。小4の頃事故に遭った以前の記憶が」
真には既にバレている。
夕と透はぽかんと口を開けている。
蒼空は何も言わずじっと私を見つめた。
真は小さくため息をつく。
「本当なんだね。理事長から事前に聞いてはいたけど、実は半信半疑だったんだよね」
優那ちゃんの様子から見て、確信したよ、という。
「葵兄ちゃん、理事長から聞いてたってどういうこと?」
「今日俺がここに来たのはさ、勿論皆の顔を見に来たのが一番なんだけど、理事長からの命でもあるんだよ」
「最近寮に入った女の子、”優那ちゃん”には幼い頃に記憶がない。どうにかして思い出させてあげたい、何か少しでも知っていることがあれば話してあげて欲しい、もしかしたら思い出すかもしれないって聞いてね。そこで、写真を見せられてさ」
「写真……?」
写真が、あるの?
「そう、写真。君と透、そして俺と______4人が写った幼い頃の写真ね。
それで思い出したんだ。あの時、弟と遊んでいた女の子が、理事長の言う記憶をなくした”優那ちゃん”ってことをね。
これは、弟のためにも、その女の子のためにも俺が動いてあげるべきだと思って、理事長の話を飲んだんだ」
まさかこうなるとは思ってなかったけど。
と、付けたす。
「それで、優那ちゃんは何か思い出したの?」
恐る恐る、私の表情をうかがう夕。
「………少しだけ」
「そ、そうなんだ……。記憶をなくしてるってことは、他にも思い出せないことがあるんだよね?」
「うん。ほとんど思えてないから。家族との思い出以外全部」
「___この話は終わりにしよ」
「蒼空……?」
あまり乗り気でない様子。
「蒼空、何か言いたいことあるならはっきり言えよ」
真が、キッと鋭い視線を向ける。
その場の空気が一気に冷えたようだった。
「俺が言いたいのは、理事長の考えに反対ってこと。ただそれだけだから」