思い出してはいけないこと(仮)加筆修正進行中
蒼空は、いつもとは違う暗い表情でその場から去ってしまった。
「あいつ、なんであんなにピリピリしてるんだ?」
「僕にもわかんない。蒼空があんな風になるの初めてだし。…………それにしてもあの言い様、蒼空はやっぱり何か知ってるんじゃないかな」
「気になるけど、今はそっとしておいてあげよう。で、葵兄ちゃん、知ってることを全て話してもらおうか」
「知ってること全てねぇ……………残念ながらそれは無理だ」
「どうして。理事長にでも口止めされてる、とか?」
問い詰める透。
「その通り」
「葵くん、あそこまで言っておいてあとは秘密なんてずるいよ」
「確かにな」
「何が何でも、俺はあれ以上言うわけにはいかないんだ。後は君達次第、ってやつだよ」
そういいながら、ほんの一瞬、視線を私に逸らした。
「?」
「んだよそれ」
「葵くんは意地悪だなー」
「あははっ。………………さてと、俺はそろそろ御暇しようかな」
「ええ!葵くん、もう帰っちゃうの!?」
「皆元気そうだし、やるべき事は終えたし、帰ってレポートの続きしなきゃね。あ、これ手土産。ここに置いておくよ」
テーブルの上に紙袋を置き、身支度を整え始めた。
「あ、見送りはいらないからね」
「はーい」
「そうだ」
ちょいちょいと、私に向けて手招きをするものだから、不安に思いつつもそっと近づいた。
そして、耳元でこう言う。
「……………俺は君と彼の仲を取り持つ訳では無いけど___________思い出すことも、彼の為だ」
「え?」
あえて、"彼"と名前を伏せているのはなぜだろう。
「ま、君の気持ち次第ではあるけどね。
別に、俺の弟をあげてもいいんだけどな〜」
「はぁ?全く、何言ってるんだか」
当の弟は、呆れてる模様。
「それじゃあね。また近々遊びにくることにする。その時はゆっくりするよ」
「それと、俺が見た写真は1枚だけじゃない」
最後にそう言って、透のお兄さんは帰って行った。
「_______________この写真、本当に懐かしいな〜」
男の子が3人と、女の子が1人写った1枚の写真をヒラヒラと空に仰ぐ。
懐かしく思いながらも、しばらくしてジャケットの胸ポケットに仕舞うと、大学寮に向けて再び歩き出した。