思い出してはいけないこと(仮)加筆修正進行中
「嵐のように来ては去っていったね。兄ちゃんが一体何を考えてるのかさっぱりだ」
確かに、突然現れては言いたいことを言って颯爽と帰ってしまった。
「それにしても、まさか優那ちゃんにそんなことがあったなんてね。僕、ビックリしちゃった」
「あぁ」
「やっぱり、あの話は優那ちゃん自身の事だったんだね」
小説の話だと言って、透に問いただした時の話だ。
「………うん」
「優那は、思い出したいと思うのか?」
真が、真剣な眼差しで問う。
「…………どうかな。私も自分のことがよく分からないの」
私は、随分と矛盾しているんだから。
そう言って、私は顔を歪ませた。
「優那ちゃんが知りたいなら、俺が知っていること全てを話すよ。
知りたくないのなら、それはそれでいい。
所詮子供の頃の話だ。そう言ってしまえば大したことないんだよ。
……決めるのは優那ちゃんなんだよ」
「透は、思い出して欲しい?」
「正直に言うと、忘れられてしまったのは悲しいな。思い出して欲しいという気持ちもあるよ。でも今も大切だ」
「なら少し、私に時間をちょうだい?」
いろいろと考える必要があるみたいだ。
「そうだね」
「じゃあ、一旦この話は終わりだな」
「僕、部屋でお菓子でも食べようかな」
「食べすぎないようにね」
「はーい。あ、あと、蒼空の様子も見てくるよ」
こうして、一旦幕は降りた。
ベッドでかわいらしい抱き枕を抱きながら思い悩む、たった一人を除いて。