思い出してはいけないこと(仮)加筆修正進行中
「あ、ごめん」
やっと離されたのはいいのだけど、まだ顔が熱い。
「優那ちゃん、顔真っ赤。蒼空に抱きしめられてドキドキしちゃった?」
「これはちがっ……」
どうにも、言い訳という言葉が口から出てこない。
「そんなになっちゃうなんて、優那ちゃんも変わったよね。前よりいろんな顔が見れて嬉しい半分、妬いちゃうなぁ」
自分では分からないが、どうやらここ最近の私は、表情が良く出やすくなっているらしい。
『ただいまより、応援団によるエール交換を始めたいと思います。応援団に所属する生徒は、入場門にお集まりください』
開会式が終わり、しばらくした今、アナウンスが流れた。
「あ、じゃあ僕達行ってくるね。蒼空、行こう!」
「ん、行ってくる。ちゃんと見てて」
「うん。でも、立ったまま寝ないでね?」
「大丈夫、大丈夫」
ぽんぽんと、私の頭を撫でると、足早に入場門の方へと向かっていった。
去り際、ふっと微笑む表情が、なんだか懐かしく感じたのはなぜだろう。