羽ばたけなくて

次から次へと涙が溢れ出る。

私はしばらくの間、泣き続けた。

枯れ果ててしまうのではないかというほど、

泣き続けた。

その間、雅也は声を掛けることもなく、

ただ私の側に立っていた。

きっといつもの表情で

私を見守っていてくれたに違いない。

さりげない雅也の優しさに私は心の中で感謝した。

ようやく涙もおさまった頃には、

日が傾き空が綺麗な茜色に染まっていた。

「ありがとう、雅也。」

私は涙の痕を見せまいとハンカチで頬を覆いながら、

雅也の目を見て微笑む。

その微笑みを見て安心したのか、雅也は小さく頷く。

そして、ゆっくりと歩き始めた。