羽ばたけなくて
1学期最終日だった今日、

あれから私たちは『CANDY』へ寄ることなく

真っ直ぐ帰ってきた。

いつもの笑顔を見せようとする美園だったけれど、

私たちに気を遣わせまいと

どこか無理しているように感じた。

それでも、別れ際、美園はにこっと笑顔を見せながら、

「じゃ、今日中にみんなにメールするからね。」

と言い、大きく手を振りながら歩いていった。

大志もまた美園への想いを考えながらも

「じゃ」とだけ言い、別れた。

そして、私は当たり前のように

雅也と私の家の前まで一緒に歩く。

その僅かな時間に幸せを感じてしまう自分を、

今は少し責めてしまう。

ただ、その間、交わされる会話はほとんどないのだけれど。

「じゃ、またね。」

私がそう言い、手を小さく振ると雅也もまた、

「じゃ。」

と軽く言い、去っていった。

何気ないことなんだけれど、

夏休み期間である約1ヶ月間は

こうしてみんなと歩けないんだと思うと、

少し胸の奥がぎゅっと締め付けられた。

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