羽ばたけなくて
そう言われてみればそうだ。

私はこの家に今まで一度も

友達を連れてきたことがなかった。

あの頃の私には友達なんて呼べる人が

1人もいなかったから。

お母さんの言葉に、

お父さんが読んでいた新聞をたたみながら頷く。

「楽しく過ごせるといいな。」

お父さんの言葉に、私は心から笑顔で頷いた。

「うん。ありがとう、お父さん。お母さん。」

お父さんもお母さんも、

こうして私が家に友達を呼べるようになったことを

すごく喜んでいるに違いない。

あの頃の私から一歩ずつだけれど心が成長している姿に、

きっと安堵しているはずだ。

私はテレビの方へ向き直ると、

手にしていた携帯電話のボタンを押し始めた。


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