羽ばたけなくて
「羽衣……」

その目にはいつもの元気な輝きがなく、虚ろだった。

「隣、いい?」

私の言葉に美園がこくんと頷く。

公園の遊具でキャッキャとはしゃぎ回る子ども達の声が、

同じ場所にいるはずなのに

なんだか別世界のような気がする。

ここのベンチだけが異空間。

でも時折吹く穏やかな風が、

ざわつく胸を少しずつ落ち着かせてくれた。

「ありえないって……」

突然、そう呟いた美園に、私は視線を向ける。

「“ありえない”って?」

私が訊き返すと、

美園が今度は視線を私に合わせて言葉を続ける。

< 280 / 401 >

この作品をシェア

pagetop