羽ばたけなくて
「いきなり告白だなんて……。

 私、お父さんやお母さんの期待にこたえなくちゃって、

 一生懸命頑張ろうって心の中で決めたところだったのに。

 私が頑張ればお父さんやお母さんが喜んでくれるって。

 なのに、大志のヤツ……」

美園の目から涙が溢れ出る。

私にはかける言葉が見つからなくて、

ただ美園の肩を優しくポンポンとすることしか出来ない。

「大志の、ばか……」

美園の言葉に、私の胸がぎゅっと締め付けられる。

「美園は……。

 美園は、大志のことどう想っているの?」

私がなるべく穏やかに訊く。

美園はそれまで合わせていた視線を少しずらすと、

口を閉ざした。

しばらくの間の後、美園がふっと立ち上がった。

「ゴメン。私、今日は帰るね。」

そう言い残すと、美園はとぼとぼと歩き出した。

私はその後ろ姿を見続けるしか出来ないでいた。

< 281 / 401 >

この作品をシェア

pagetop