羽ばたけなくて
私は小さなカゴバッグを手にすると、

慌てて部屋を出て1階へと向かった。

階段を駆け下りると玄関にいるお母さんから、

「羽衣、お客さま。三上君がいらしてるわよ。」

と優しくふんわりとした声をかけてくれた。

その声に導かれるようにして玄関へと向かう。

そこには、

少しはにかんだようにも見える雅也が立っていた。

「雅也……。」

本当に家に来てくれたんだね。

そう言おうとしたけれど、

上手く口から出てこなかった。

雅也を出迎えてくれたお母さんが

私をみるなりにっこりと笑って、

「可愛い」なんて言うもんだから、

私の顔も自然と赤く染まってしまう。

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