羽ばたけなくて
「これから2人、デートなの?」

無邪気にそんなことを訊いてくるお母さんに、

私は無言でお母さんのわき腹を突っ込んだ。

あまりにストレートすぎる言葉に、

私の心が動揺してしまう。

そんな私のことを知ってか知らずか、雅也は静かに

「おばさん。少し、羽衣さんをお借りします。」

と、お母さんを真っ直ぐ見ながらそう言うと、

今度は視線を私に向けて顎を横に動かした。

「あ、うん。じゃあ、行ってきます。」

お母さんにそれだけ言うと、

私はローヒールのサンダルを履いて

雅也の後を追うように家を出た。

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