羽ばたけなくて
秘密
「ただいまー。」

今日の我が家の夕食はハンバーグだろうか。

玄関を開けた途端、

家の中に広がる焼けたお肉とソースの香り。

それを嗅いだだけで、自然と私のお腹が鳴る。

「おかえり、羽衣。

 ちょうどよかった。早く手洗って手伝って。」

顔だけひょっこりと顔を出したかと思うと、

いつものように早口で言った。

私のお母さん、大塚千賀子(おおつか ちかこ)は、

年齢こそいつも実年齢より若くみられるのだけれど、

早口で人の話をちゃんと最後まで聞かないからか、

とても忘れっぽい性格だ。

「そうだったっけ?」が口癖の少々困った人なのだ。

今だって、私の返事を待たずして

キッチンへと戻ってしまった。

まぁ、私に断る理由なんてないからいいんだけれど。

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