羽ばたけなくて
それまでの新堂さんから想像も出来ないほどに、

温かくて心地のいいその響きに、

私たちはただじっと

新堂さんへと視線を向け続けていた。

ゆっくりと頭を上げると、

新堂さんは言葉を続ける。

「私は美園お嬢様の幸せを願いながら

 ずっと側におりました。

 今回のことも、

 婚約者様と一緒になれるのが美園お嬢様の幸せだと……。

 でも、それは間違っていました。

 私やご主人様の勝手な思い込みや行動が、

 美園お嬢様を苦しめ

 そして追い詰めてしまっていたんですね。

 お嬢様、本当にすみませんでした……」

表情をひとつ変えず、

しかし声を震わせて言う新堂さんの姿に、

美園は静かに首を横に振った。

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